忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「亜美」

「何?」

「今日、静かだね」

「いつも静かだけど」

「僕といるときは結構喋るじゃん」

「……そう?」

「そうだよ」

 授業が終わった教室。

 亜美は問題集を鞄にしまいながら、丈を見た。

「何かある?」

「ない」

「ある顔してる」

「どんな顔」

「相談したいけど言えませんって顔」

「…………」

「当たり?」

「先生うるさい」

「はい、当たり」

 丈が笑う。

 亜美は少しむっとして、鞄のファスナーを閉めた。

 相談したい。

 確かに。

 でも、何から聞けばいいのか分からない。

 前回、丈は言った。

 ――何も恥ずかしくないよ。

 そのときは、そうかもしれないと思った。

 なのに、いざ話そうとすると、やっぱり恥ずかしい。

「……先生」

「うん」

「この前の」

「この前?」

「忘れたならいい」

「ああ、待って」

 帰ろうとした亜美を丈が呼び止める。

「分かった」

「…………」

「調べてたやつでしょ」

「言わなくていい」

「亜美から言ったんじゃん」

「そうだけど」

 顔が熱い。

 もう帰りたい。

 でも、聞きたい。

 その二つが胸の中で行ったり来たりする。

 丈は急かさなかった。

 ただ、亜美が話すのを待っている。

「…………」

 こういうところ、ずるいと思う。

 無理に聞かない。

 だから、自分から話したくなる。

「……先生は」

「うん」

「大人っぽい女の人って、どういう人だと思う?」

「大人っぽい?」

「うん」

「また随分ふわっとした質問だね」

「だって分からないから聞いてるの」

「そうだね」

 丈は少し考える。

「見た目?」

「それも」

「服とか化粧とか?」

「それだけじゃなくて」

「じゃあ中身?」

「……たぶん」

 亜美は自分でもよく分からなかった。