忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 電車の窓に。

 自分の顔が映っている。

「…………」

 亜美はぼんやりと見つめた。

 黒い髪。

 制服。

 学校指定の鞄。

 どう見ても。

 高校生。

 さっきの女性とは。

 全然違う。

 綺麗だった。

 大人っぽかった。

 幸也の隣にいることが。

 自然に見えた。

「…………」

 私が。

 あそこにいたら。

 どう見えるんだろう。

 妹?

 後輩?

 子ども?

 少なくとも。

 さっきの人みたいには見えない。

 亜美は自分の手を見る。

 恋をした。

 好きになった。

 でも。

 それだけだった。

 恋愛なんて。

 したことがない。

 誰かと付き合ったことも。

 ない。

 好きな人と手を繋いだことも。

 ない。

「…………」

 キスだって。

 ない。

 そこまで考えて。

 亜美は急に恥ずかしくなった。

 何を考えているんだろう。

 窓から顔を逸らす。

 でも。

 一度考えてしまうと。

 頭から離れなかった。

 幸也は。

 きっと。

 全部知っている。

 誰かを好きになることも。

 付き合うことも。

 その先も。

 丈が言っていた。

 何度も女の子と付き合っているって。

 だったら。

 自分とは。

 全然違う。

「…………」

 大人になりたい。

 ふと。

 そう思った。

 幸也の隣にいても。

 おかしくないくらい。

 あの女性のように。

 綺麗で。

 余裕があって。

 自分に自信を持っているような。

 そんな大人に。