忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「先生」

「ん?」

 授業が終わったあと。

 亜美は問題集を持って、丈のところへ行った。

「ここ、分からない」

「珍しく勉強の質問だ」

「失礼」

「いつも相談の方が多いだろ」

「……そうだけど」

 丈が笑う。

「どこ?」

「ここ」

 亜美が問題集を開く。

 丈は隣に立って、問題を指差した。

「ここは、この公式を先に使って」

「うん」

「それからこっちを代入」

「…………」

「亜美?」

「聞いてる」

「今、絶対聞いてなかった」

「聞いてた」

「じゃあ、ここは?」

「…………」

「ほら」

 丈が呆れたように笑った。

「何考えてるの?」

「何も」

「嘘」

「…………」

 亜美は問題集に視線を落とす。

「……大学」

「誠星?」

「うん」

「また?」

「またって何」

「最近ずっとその話してるから」

「だって行きたいもん」

「はいはい」

 丈は笑った。

 その理由を。

 丈は知っている。

 誠星大学に行きたい理由。

 そこで、もう一度会いたい相手。

「勉強しないと受からないよ」

「分かってる」

「じゃあ集中」

「……はい」

 亜美はシャープペンシルを持ち直した。

 けれど。

 頭の片隅には。

 やっぱり。

 赤みがかったブラウンの髪が残っていた。