忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 亜美にとっても。

 少しずつ変わったことがあった。

「亜美さん」

 廊下で声をかけられる。

 振り返ると、群司がいた。

 今日は友人たちと一緒だ。

「今から移動?」

「うん」

「俺らも」

「群司、知り合い?」

 隣にいた男子が亜美を見る。

「同級生」

「いや、それは見れば分かる」

「友達」

「…………」

 亜美が群司を見る。

 友達。

 前に丈から言われた言葉。

 自分ではまだ、そう呼んでいいのか分からなかった。

 でも。

 群司は何でもないことのように言った。

「へえ。群司と?」

「何だよ」

「お前マジで全校生徒の友達だな」

「前も誰かにそれ言われたぞ」

「俺じゃね?」

「お前だったっけ?」

「知らん」

 友人たちが笑う。

 亜美は少しだけ居場所に困った。

 いつも群司と二人で話しているときとは違う。

 知らない男子が何人もいる。

「じゃあ、私行くね」

「あ、うん」

 亜美が歩き出す。

 すると。

「亜美さん」

 もう一度、群司に呼ばれた。

「何?」

「昼、今日行くから」

「……分かった」

「じゃ」

「うん」

 亜美は歩き出した。

 少し離れてから。

 後ろで何か騒いでいる声が聞こえた。

「お前、やっぱ女じゃん!」

「だから違うって!」

「昼って何!?」

「うるせえ!」

「亜美さんっていうの!?」

「名前呼ぶな!」

「何でだよ!」

 亜美は足を止めかけた。

「…………」

 何を騒いでいるんだろう。

 よく分からない。

 でも。

 群司が。

 友達。

 そう言った。

 その言葉だけが、妙に耳に残っていた。