忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 教室の近くまで来たところで、二人は別れた。

「じゃあ」

「うん」

「またな」

「……うん」

 群司は軽く手を上げ、そのまま自分の教室の方へ歩いていった。

 亜美は、その背中を少しだけ見送る。

「…………」

 昨日まで。

 学校には、話す人がいなかった。

 必要なことをクラスメイトと話すことはあっても、それだけ。

 昼休みになれば、一人で屋上へ行く。

 イヤホンをして。

 好きなピアノを聴きながら昼ご飯を食べる。

 ずっとそうだった。

 今日だって。

 そのつもりだった。

 でも。

 群司が来た。

 隣で昼ご飯を食べて。

 同じイヤホンで、同じ曲を聴いた。

 自分の好きなものについて話した。

 いつもと違う昼休みだった。

 それなのに。

 嫌ではなかった。

「…………」

 亜美は自分の教室へ入る。

 昨日までと同じ場所。

 同じ席。

 同じ人たち。

 何も変わっていない。

 それでも。

 さっきまで一緒にいた人の教室が、この校舎のどこにあるのか。

 亜美は知っている。