忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「群司、購買行こうぜ」

「今日いいわ」

「は?」

「弁当あるし」

「いや、俺のパン買うの付き合えよ」

「何でだよ」

「一人寂しいじゃん」

「全校生徒の友達がいるだろ」

「それお前な」

「あ、そっか」

「自分で言うなよ」

 友人たちが笑う。

 群司も笑った。

 いつもの昼休み。

 机を寄せる。

 弁当を広げる。

 くだらない話をする。

 そのはずだった。

 なのに。

「…………」

 群司は教室の後ろの時計を見る。

「何?」

「ん?」

「時計」

「いや、別に」

「今日何かあんの?」

「ない」

「じゃあ何だよ」

「だから何でもないって」

「昨日からそれ多くね?」

「うるせえな」

 群司は笑いながら弁当を開いた。

 唐揚げを一つ食べる。

 卵焼き。

 米。

 いつも通り。

 なのに。

 妙に落ち着かない。

 昨日のことが頭に残っている。

 濡れたロッカー。

 俯いていた亜美。

 笑っていた女子たち。

 それから。

『嫌』

 小さな声。

『勝手に決められるの、嫌』

 群司は箸を止めた。

「…………」

 大丈夫かな。

 昨日。

 別れ際には笑っていた。

 でも。

 今日も何かされていたら。

「……群司?」

「ん?」

「マジでどうした?」

「何が?」

「今日静かじゃね?」

「そう?」

「そう」

 別の友人も頷く。

「珍しい」

「俺だって静かな日くらいあるわ」

「ない」

「ある」

「ない」

「何でお前らが決めんだよ」

 笑い声が上がった。

 群司も笑った。

 けれど。

 また。

 時計を見る。

 昼休みはまだある。

「…………」

 やっぱり。

 ちょっとだけ。

 見に行こうかな。

 昨日言ったから。

 屋上で見かけるって。

 だから。

 行ったって変じゃない。

 ――いや、変か?

「俺、ちょっと行ってくる」

「どこ?」

「屋上」

 弁当を持ったまま立ち上がった群司に、友人が目を丸くする。

「は?」

「屋上」

「何しに?」

「飯」

「ここで食ってんじゃん」

「たまには外で食いたい」

「何それ」

「じゃ」

「おい、群司」

 教室を出ようとして。

「あ」

 群司は振り返った。

「唐揚げ一個食っていいぞ」

「マジ!?」

「残ってたらな」

「戻ってこいよ!」

「気が向いたら」

 笑いながら教室を出た。

 廊下へ出て。

 一人になる。

 そこでようやく。

 群司の足が少し遅くなった。

「…………」

 何してんだ、俺。

 昨日まで。

 話したことすらなかったのに。

 でも。

 気になった。

 ただ、それだけだった。