忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 次の日。

 亜美はいつもより少し早く学校に着いた。

 まだ人の少ない廊下を歩く。

 足音だけが、静かな校舎に響いていた。

 昨日、水浸しになったロッカーの前で足が止まる。

「…………」

 怖い。

 ほんの少しだけ、扉を開ける。

 何もない。

 昨日乾かしてから戻したものが、そのまま入っている。

 亜美は小さく息を吐いた。

 大丈夫。

 今日は大丈夫。

 そう思って、扉を閉めた。

 それでも。

 昨日のことがなくなったわけではない。

 廊下の向こうから女子の話し声が聞こえると、身体が強張る。

 笑い声が聞こえると。

 自分のことではないかと考えてしまう。

 教室へ入る。

 視線を上げないまま、自分の席へ向かった。

 椅子を引く。

 鞄を置く。

 いつもと同じ。

 何も起きていない。

 それなのに。

 胸の奥に、小さな石が入っているみたいだった。