忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 家に帰っても。

 何も手につかなかった。

 ベッドの上に座り、スマートフォンを見る。

 通知が来るたびに心臓が跳ねた。

 けれど。

 幸也ではない。

「…………」

 画面を伏せる。

 しばらくして。

 また見る。

 幸也からは来ていない。

 今日のことが頭から離れなかった。

『何の相談?』

『丈に何を相談してたの?』

『何で言えないの?』

 答えられなかった。

 何を言えばよかったんだろう。

 どう言えば。

 幸也は傷つかなかったんだろう。

「…………」

 枕を抱きしめる。

 目を閉じても。

 幸也の顔が浮かんだ。

『じゃあ、俺が出る』

「…………」

 胸が痛い。

 行かないで。

 そう言ったのに。

 幸也は行ってしまった。

 また話すと言ってくれた。

 嫌いになっていないとも。

 それなのに。

 怖い。

 スマートフォンを手に取る。

 幸也との画面を開いて。

 閉じた。

 そのまま。

 丈との画面を開く。

「…………」

 最後のやり取りが残っている。

 指で辿る。

 何度も相談した。

 幸也のことも。

 大学のことも。

 群司のことも。

 分からないことがあるたびに。

 丈に聞いた。

 丈はいつも答えてくれた。

「…………」

 メッセージを打つ。

『先生』

 消した。

『相談したいことがあります』

 消す。

『少しだけ話せませんか』

 また消した。

 何度打っても。

 送れない。

 もう会わないと言われた。

 その言葉を思い出すたび、指が止まる。

「…………」

 画面を閉じた。