忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 一方。

 群司はいつものように、教室で友人たちと昼食を取っていた。

「群司、唐揚げ一個」

「やだ」

「まだ何もしてねえじゃん」

「お前が人の弁当見ながら『唐揚げ一個』って言った時点で分かるわ」

「一個くらいいいだろ」

「自分の食えよ」

「俺、今日焼き魚なんだよ」

「知らねえよ」

 周囲から笑い声が上がる。

 群司も笑う。

 別の友人が近づいてくれば、自然に場所を空ける。

 誰かがくだらない話を始めれば、一番最初に笑う。

 群司の周りには、いつも人がいた。

 それが普通だった。

「そういや群司」

「ん?」

「この前言ってた子って誰?」

「は?」

「屋上の」

「俺、何か言った?」

「黒髪の子がどうとか」

「ああ……」

 群司は箸を止めた。

 頭に浮かぶ。

 長い黒髪。

 イヤホン。

 いつも一人でいる女の子。

「亜美さん?」

「そう、それ」

「何でお前名前知ってんの」

「有名じゃん。綺麗だし」

「……ふーん」

「何その反応」

「別に」

「気になってんの?」

「何でそうなるんだよ」

 群司は笑いながら友人の肩を軽く小突いた。

「話したことすらねえよ」

「マジ?」

「マジ」

「群司が?」

「だから俺を何だと思ってんだよ」

「全校生徒の友達」

「前も誰かにそれ言われたぞ」

「じゃあ、みんな同じこと思ってんじゃん」

「何だよそれ」

 また笑い声が上がる。

 群司も笑った。

 でも。

 ほんの少しだけ。

 屋上へ続く階段のことを思い出す。

 今日も。

 あそこにいるのだろうか。

 そんなことを考えてから。

 ――何で気にしてんだ、俺。

 自分でも分からなくなって。

 残っていた弁当を口に入れた。