忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「昔、丈とそういう関係だった。それだけなら」

 幸也は一度言葉を切った。

「付き合う前のことだし、俺だって人のこと言えない」

「…………」

「でも、付き合ってからも会ってたんだろ?」

「相談だけです……」

「だから、その相談って何だよ」

「…………」

 声が強くなる。

 亜美の身体が強張った。

「……ごめんなさい」

「謝ってほしいんじゃない」

「…………」

「俺は知りたいだけなのに、亜美ちゃん何も言わないじゃん」

「…………」

「何で言えないの?」

「分からない……」

「何が?」

「どう言えばいいのか……分からないです……」

 涙が頬を伝った。

「先生とは……」

「丈が何?」

「…………」

 亜美は唇を震わせた。

「先生は、悪くないです……」

「…………」

 幸也の表情が変わった。

「何で今、丈庇うんだよ」

「…………」

「俺、丈が悪いなんて言った?」

「違……」

「じゃあ何?」

「私が……相談したくて、会ったから……」

「…………」

「先生が呼んだんじゃなくて……私が……」

「分かったよ」

「だから……」

「分かったって」

 幸也の声がまた強くなる。

 亜美は息を呑んだ。

「今、丈が悪いかどうかの話してないから」

「…………」

「俺が聞いてるのは亜美ちゃんのこと」

 涙が落ちる。

「分かんないんだよ」

「…………」

「何で丈とそういう関係だったのかも」

「…………」

「何で付き合ってからも会ってたのかも」

「…………」

「相談って何なのかも」

「…………」

「何にも分かんない」

「ごめん……なさい……」

「だから謝らなくていいって」

「…………」

「俺も今、ちゃんと話せない」

 幸也が息を吐いた。

「だから今日は帰って」

「…………」

 亜美は首を横に振った。

「嫌です……」

「亜美ちゃん」

「嫌われたくないです……」

「…………」

「幸也さんに……嫌われたくない……」

「嫌いになってないって」

「でも……」

「少し考えたいだけ」

「何を……?」

「…………」

 幸也が答えなかった。