忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 今度は、幸也から目を逸らせなかった。

「帰りたくないです……」

「今話しても――」

「嫌いに……なりましたか」

「え?」

「私のこと……」

 喉が震える。

「嫌いに、なりましたか……?」

「なってない」

「…………」

「嫌いになったなんて言ってないよ」

「本当ですか……?」

「うん」

「じゃあ……」

 震える指が、幸也の袖を掴んだ。

「帰ってって、言わないでください……」

「…………」

「ちゃんと話しますから……」

「何を?」

「…………」

 言葉が止まる。

 幸也が亜美を見る。

「何を話すの?」

「それは……」

「じゃあ、相談って何?」

「…………」

 また答えられない。

「ほら」

「…………」

「今聞いたら、俺もっと聞くよ」

 幸也の声には、まだ苛立ちが残っていた。

「それでまた亜美ちゃんが黙ったら、俺もたぶんもっと腹立つ」

「…………」

「だから今は無理」

「でも……」

 袖を掴む指に力が入る。

「もう先生とは何もしてないです……」

「それは分かった」

「付き合ってからは、本当に何もしてないです」

「うん」

「だから……」

「だからじゃない」

「…………」

 亜美の目に涙が滲んだ。