忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「……群司が?」

「うん」

 喉が詰まった。

 どこまで。

「亜美ちゃん?」

「…………」

 幸也の顔が見られなかった。

「前の日、丈と会ったんだよね」

「……はい」

「じゃあ、そのキスマーク」

「…………」

「丈?」

 スカートを握る。

「亜美ちゃん」

「…………」

「丈とキスした?」

 声が出ない。

「した?」

「…………」

 沈黙が落ちた。

 幸也が小さく息を吐く。

「……したんだ」

「…………」

 何を言えばいいのか分からなかった。

「キスだけ?」

「…………」

 心臓が大きく鳴る。

「亜美ちゃん」

「…………」

「それだけ?」

 顔を上げられなかった。

「……それだけじゃないんだ」

「…………」

 幸也の声が変わった。

 胸の奥が縮む。

「いつから?」

「…………」

「高校?」

 指先に力が入る。

「……高校なんだ」

「…………」

「大学入ってからも続いてた?」

 息が浅くなる。

「文化祭の前の日も?」

「…………」

 幸也が黙った。

 しばらく何も聞こえなかった。

「……そっか」

 その声が、遠く感じた。

「幸也さん……」

「俺と付き合ってからは?」

「それは……!」

 亜美は顔を上げた。

「してないです」

「…………」

「本当に、してないです」

「キスも?」

「してないです」

「その先も?」

「してないです」

 今度はすぐに答えられた。

「本当です……」

 幸也は亜美の顔をじっと見ていた。

「分かった」

「…………」

 張りつめていた息が少しだけ抜ける。

 けれど。

「じゃあ、会ってはいたんだ」

「…………」

 身体が固まった。