忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 一人になった幸也は。

 スマートフォンを取り出した。

 少し前に届いていたメッセージ。

『今日、部室行ってもいいですか?』

「…………」

 亜美。

 会いたい。

 それは変わらない。

 でも。

 腹の奥に残った苛立ちが消えない。

 ほとんど話したこともない男に。

 自分の彼女のことをあれこれ言われた。

 しかも。

 亜美に告白して。

 まだ亜美を好きな男に。

「…………」

 あんなやつの話。

 気にしなければいい。

 なのに。

 できなかった。

 文化祭の前日。

 自分が亜美を断ったあと。

 丈と一緒にいた。

 翌日。

 首にあったという跡。

 そして。

『本当に、何も聞いてないんですか?』

「…………」

 あの言葉が。

 今になって引っかかる。

 丈の顔が浮かんだ。

 同じ研究室で。

 いつも通り話して。

 ついこの前も。

 亜美のバイト先で会った。

『亜美、幸せそうだよ』

 何も変わらない顔で。

 そう言っていた。

「…………」

 高校の頃から。

 丈は亜美を知っていた。

 自分が知らなかった亜美を。

 丈は知っている。

 でも。

 どこまで。

 幸也は画面を見る。

『今日、部室行ってもいいですか?』

 聞けばいい。

 亜美に。

 それだけだ。

「…………」

 指が動く。

『いいよ』

 送信する。

 すぐに既読がついた。

『ありがとうございます』

 いつもなら。

 その文字を見るだけで。

 少し嬉しくなるのに。

 今日は。

 素直に笑えなかった。

 会ったら。

 聞く。

 そう決めた。

 ただ。

 何から聞けばいいのか。

 まだ分からなかった。