忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「それ」

 幸也の声が低くなる。

「誰がつけたか亜美ちゃんに聞いたの?」

「聞いてません……」

「なのに何で俺に言うの」

「前の日に」

 群司は幸也を見る。

「丈さんと一緒にいたからです」

「…………」

「俺が見たのは、その順番です」

「だから丈だって?」

「決めつけてません」

「今そういう言い方してるでしょ」

「…………」

「前の日に丈と一緒にいた。次の日にキスマークがあった。だから丈じゃないかって」

「そう思ってます」

「…………」

「でも、証拠はないです」

「だったら」

「それでも」

 群司は退かなかった。

「俺が見たことは嘘じゃないです」

「…………」

「前の日に二人が一緒にいたことも。次の日、亜美の首に跡があったことも」

「…………」

「それは本当です」

 幸也は黙った。

 腹が立つ。

 ほとんど話したこともない男が。

 突然現れて。

 自分の彼女のことを。

 知っているような顔で話している。

 しかも。

 亜美に告白した男が。

「…………」

 聞く必要なんてない。

 そう思うのに。

「文化祭の前の日って」

 気づけば。

 幸也の方から聞いていた。

「何時くらい?」

「夕方です」

「…………」

「何でですか?」

「別に」

 短く返す。

 でも。

 頭の中では。

 もう順番が並んでいた。

 文化祭の前日。

 亜美は自分に告白した。

 自分は断った。

 そのあと。

 丈と一緒にいた。

 そして翌日。

 首に。

「…………」

 幸也は眉間を押さえた。

「幸也さん」

「何」

「亜美から、本当に何も聞いてないんですか?」

「…………」

 幸也の目が群司に向く。

「さっきから何なの、それ」

「え?」

「何で君に、俺と亜美ちゃんが何話してるかまで答えなきゃいけないの」

「…………」

「告白したから?」

「違います」

「じゃあ何」

「俺はただ」

「ただ?」

「…………」

 群司は言葉を詰まらせる。

「俺より亜美ちゃんのこと知ってるみたいに話すの、やめてくれる?」

「…………」

「彼氏だから全部知ってるとか、そういうこと言いたいんじゃないけど」

 幸也の声には。

 隠しきれない苛立ちが混じっていた。

「君にあれこれ言われるの、普通に腹立つ」

「……すみません」