忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「それで?」

 幸也の声に、群司が顔を上げる。

「何が言いたいの」

「……文化祭の前の日」

「うん」

「二人が一緒にいるところを見ました」

「だから、同じバイト先なんでしょ」

「でも」

「でも何?」

「距離が近かったんです」

「…………」

 幸也の眉が寄る。

「それだけ?」

「丈さんは」

 あの日を思い出す。

「そのまま亜美を連れていった」

「だから?」

 幸也の声が少し低くなる。

「…………」

「高校のときから知ってるなら、距離が近くても別に変じゃないでしょ」

「でも」

「さっきから何?」

「…………」

「君が丈と亜美ちゃんのこと気にしてる理由、俺には分かんないんだけど」

 幸也が短く息を吐く。

「悪いけど」

 そのまま話を終わらせるように。

「それだけなら――」

「俺」

 群司が遮った。

「…………」

 幸也が見る。

「亜美に告白しました」

「…………」

 幸也の目が止まった。

「何?」

「文化祭の日に」

「……亜美ちゃんに?」

「はい」

 初めて。

 幸也の顔から、話を切り上げようとしていた気配が消えた。

「それで?」

「振られました」

「…………」

「好きな人がいるって」

「…………」

 幸也は何も言わない。

「そのときは、誰なのか知りませんでした」

「……そう」

「幸也さんだったんですね」

「…………」

「この前、二人を見て初めて分かりました」

 幸也の視線が僅かに鋭くなる。

「それで俺にこんな話しに来たの?」

「それだけじゃないです」

「何」

 今度は。

 幸也が話を聞いている。

「文化祭の日」

 群司は言葉を選ぶ。

「ステージに出る前に、気がつきました」

 少しだけ迷う。

「亜美の首に、跡があったんです」

「…………」

 幸也の表情が止まる。

「跡?」

「はい」

「どんな」

「……キスマークだと思います」

「…………」

 沈黙が落ちた。