忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 しばらくして。

 校舎から幸也が出てきた。

「幸也さん」

「ん?」

 呼び止められた幸也が足を止める。

 群司の顔を見て、少し考えた。

「ああ。亜美ちゃんと同じサークルの」

「はい。群司です」

「うん」

「…………」

「何?」

 ここまで待っていたのに。

 いざ幸也を前にすると、言葉が出てこない。

「群司くん?」

「……亜美と」

「うん」

「付き合ってるんですよね」

「そうだけど」

「…………」

 幸也の眉が僅かに寄る。

「それ聞くために待ってたの?」

「違います」

「じゃあ何?」

 群司は幸也を見る。

「亜美から、何か聞いてますか?」

「何かって?」

「……丈さんのこと」

「丈?」

「はい」

「何で丈が出てくるの」

「幸也さんは」

 一度、息を吸う。

「丈さんと亜美が、どういう関係か知ってるんですか?」

「…………」

 幸也の表情が変わった。

「何で君にそんなこと聞かれてんの?」

「え?」

「俺ら、ほとんど話したことないよね」

「……はい」

「いきなり来て、俺の彼女と丈がどういう関係とか」

 幸也の目が群司を捉える。

「何?」

「…………」

「何か言いたいなら、先に言って」

 苛立っている。

 当然だと思った。

 それでも。

「俺、二人が一緒にいるところを見たことがあります」

「丈と亜美ちゃん?」

「はい」

「それが?」

「…………」

「二人、同じバイト先だよ」

「え?」

 思わず声が出た。

「同じ……バイト?」

「うん」

「…………」

「知らなかったの?」

「……はい」

 初めて聞いた。

 亜美と丈が。

 同じ場所で働いていること。

「いつからですか」

「何が?」

「同じバイトなの」

「大学入ってからじゃない?」

「…………」

「高校のとき通ってた塾みたいだけど」

「高校……?」

「うん」

 群司は言葉を失った。

 高校。

 自分と亜美が同じ学校にいた頃から。

 二人は知り合いだった。

「…………」

 知らなかった。

 一度も。

 亜美から聞いたことがない。

 学校では。

 亜美のそばにいた。

 友達がいなかった亜美と屋上で昼を食べて。

 話をして。

 自分だけは。

 亜美のことを知っているつもりだった。

 でも。

 学校を出たあとの亜美を。

 自分は知らなかった。

「幸也さんは、何で知ってるんですか?」

「丈から聞いた」

「丈さんから?」

「うん」

「…………」

 丈は。

 幸也には話していた。

 自分が亜美と同じバイト先だということを。