忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「お待たせしました」

「お疲れ」

「すみません。待ちました?」

「そんなに」

「本当ですか?」

「うん」

 亜美が幸也の前まで来る。

「寒くなかったですか?」

「平気」

「でも……」

「亜美ちゃん」

「はい?」

「お腹空いた」

「……え?」

「何か食べて帰ろ」

「はい」

 亜美が笑う。

 そのまま歩き出そうとすると、幸也が手を差し出した。

「…………」

 亜美がその手を見る。

「何」

「ここ……塾の前です」

「うん」

「先生たちが出てくるかも」

「出てきたら?」

「…………」

 亜美が少し迷う。

 幸也は手を引っ込めなかった。

「嫌ならいいけど」

「嫌じゃないです」

「じゃあ」

「…………」

 亜美は差し出された手に、自分の手を重ねた。

 すぐに幸也の指が絡む。

「……幸也さん」

「ん?」

「何でもないです」

「そっか」

 幸也が歩き出し、亜美もその隣を歩く。

 繋いだ手が、歩くたびに少し揺れる。

 亜美はその手を見て、小さく笑った。