忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 少し離れた場所。

 校舎から出てきた群司が、足を止めた。

「…………」

 幸也と亜美が歩いている。

 肩が触れそうなほど近く、亜美の片手は幸也のコートのポケットの中。

 二人の手が、その中で繋がっていることくらい見れば分かった。

「…………」

 幸也が何か言う。

 亜美が笑った。

 照れたように俯いて、それでもすぐに幸也を見上げる。

 また笑った。

 群司は動けなかった。

 少し前まで、大学で亜美の隣にいたのは自分だった。

 高校でも、大学に入ってからも。

 名前を呼べば亜美は振り向いた。

 話しかければ、ちゃんと答えてくれた。

 今は必要なことしか話さない。

 亜美の方から、自分に話しかけることもない。

「…………」

 もう一度、二人を見る。

 幸也。

 そうだったんだ。

 亜美に好きな人がいることは知っていた。

 でも、誰なのかは知らなかった。

「…………」

 幸也だったんだ。

 そう思ったとき、別の男の顔が浮かんだ。

 丈。

「…………」

 じゃあ、丈は?

 小さな引っかかりが残る。

 けれど今は、それ以上考えられなかった。

 自分にはもうほとんど見せなくなった顔を、亜美が幸也に向けている。

 そのことの方が苦しかった。

 ポケットの中で亜美の腕が少し動く。

 すると幸也が亜美を見た。

 亜美も見上げる。

 二人が笑う。

「…………」

 見たくないのに、目を逸らせなかった。

 やがて二人の姿が遠くなる。

 亜美は最後まで、群司に気づかなかった。