忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 教室へ入る。

 いつものように、いくつかの視線が向けられた。

 亜美は気づかなかったふりをして、自分の席へ向かった。

 鞄を置く。

 机の中を見る。

「……」

 何もない。

 小さく息を吐いた。

 それだけで安心してしまった自分が、少し嫌だった。

 何も入っていないことが普通なのに。

 今は、それだけで嬉しい。

 亜美は椅子に座ると、イヤホンを取り出した。

 ピアノ曲を流す。

 教室の中から。

 ほんの少しだけ、自分を遠ざけるために。