忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 校舎を出る。

 少し先に。

 幸也がいた。

「…………」

 亜美の足が自然に速くなる。

「幸也さん」

「お疲れ」

 幸也の前まで来る。

 少し息が弾んでいた。

 幸也の手が伸びてくる。

 少し乱れた亜美の髪を直す。

「走らなくていいのに」

「……待たせたくなかったから」

「待つって言ったじゃん」

「でも……」

「亜美ちゃん待つの、嫌じゃないよ」

「…………」

 髪を直していた指が離れる。

 亜美は何も言えなくなった。

「行こ」

「……はい」

 歩き出した幸也を追おうとすると。

 手を取られた。

「…………」

 指が絡む。

 最初から。

 繋いで歩くつもりだったみたいに。

 幸也はそのまま歩き出した。

「幸也さん」

「ん?」

「外ですけど……」

「だから?」

「誰かに見られたら」

「見られたら駄目なの?」

「……駄目じゃないです」

「じゃあいいでしょ」

「…………」

 幸也は前を向いたまま。

 手だけは離さない。

 亜美も。

 今度はその手を握り返した。

 すると。

 絡んだ指に、少しだけ力が返ってきた。

「…………」

「幸也さん」

「ん?」

「……何でもないです」

「そっか」

 何でもないと言ったのに。

 幸也は手を離さなかった。

 幸せ。

 そんな言葉が。

 何の迷いもなく浮かんだ。