忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「亜美ちゃん」

「はい?」

 部室を出る前。

 幸也に呼ばれて振り返る。

「今日、バイト?」

「はい」

「何時まで?」

「九時くらいです」

「そっか」

「どうしました?」

「別に」

「…………」

「終わったら連絡して」

「え?」

「帰ったか知りたいから」

「…………」

 亜美は一瞬、何も言えなかった。

「……はい」

「何でそんな嬉しそうなの」

「嬉しいからです」

 素直に言ってから。

 恥ずかしくなった。

 幸也が少しだけ目を細める。

「そっか」

「……はい」

 幸也の手が伸びてきた。

 頬にかかっていた亜美の髪を。

 耳の後ろへそっと払う。

「…………!」

「じゃあ頑張って」

「……はい」

「亜美ちゃん?」

「…………」

「聞いてる?」

「聞いてます……」

「ほんと?」

「今、頑張ってます」

「何を」

「普通にするのを……」

「何それ」

 幸也が笑う。

 亜美は顔を上げられないまま。

 部室を出た。