忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 その日の夕方。

 丈は仕事を終え、荷物を持った。

 廊下の先。

 亜美がいる。

 別の講師と話していた。

 相手の言葉に。

 亜美が少し笑う。

「…………」

 丈は足を止めた。

 亜美はまだ気づいていない。

 今なら。

 声をかけられる。

 いつもなら。

 そうしていた。

「…………」

 丈は亜美の方へ行かなかった。

 別の出口へ向かう。

 急ぐ必要はない。

 誰かと約束しているわけでもない。

 それでも。

 足を止めなかった。

 背後から。

 亜美の声が聞こえる。

 丈は振り返らない。

 そのまま。

 亜美から離れていった。