忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「先生」

「ん?」

「相談してよかった」

「そっか」

 亜美は少し笑った。

 これでいい。

 そう思った。

 けれど。

 丈は何でもないことのように続けた。

「じゃあ、相談も終わりな」

「…………」

 一瞬。

 何を言われたのか分からなかった。

「え?」

「もう相談もなし」

「……相談も?」

「うん」

 丈は前を向いたまま歩いている。

「何で……?」

「幸也と付き合うんだから」

「…………」

「その方がいいでしょ」

「でも……」

 亜美の口から、すぐに言葉がこぼれた。

「何かあったら?」

「自分で考えればいいじゃん」

「…………」

「幸也もいるだろ」

「……うん」

 そうだけど。

 胸の奥に、小さな不安が広がった。

 幸也は大好きな人。

 これからは、幸也に話せることも増えると思う。

 でも。

 丈とは違う。

 幸也のことで困ったら。

 幸也には相談できない。

「…………」

 今までは。

 何かあるたびに丈に話した。

 嬉しかったことも。

 分からなかったことも。

 怖くなったときも。

 幸也のことで泣いたときも。

 丈なら聞いてくれた。

 自分では答えを出せないときも。

 丈に聞けばよかった。

「先生」

「ん?」

「本当に……相談もしない方がいいの?」

「うん」

 迷いのない返事だった。

「亜美は幸也とちゃんと付き合いたいんだろ?」

「……うん」

「だったら、そうした方がいいよ」

「…………」

 丈がそう言うなら。

 きっと。

 その方がいい。

「……分かった」

「うん」

「そうする」

「そっか」

 ちゃんと決めた。

 それなのに。

 さっきまで感じていた安心は、どこかへ消えていた。