忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 午後。

 幸也は研究室にいた。

 机の上の資料に目を通す。

 少しして。

 一つ前の行へ戻る。

 また読む。

「…………」

 内容が入ってこない。

 昨日。

 待つと言った。

 だから待つ。

 それだけなのに。

 机の端に置いたスマートフォンが、やけに気になる。

「幸也さん」

「ん?」

 直充が顔を上げた。

「それ、さっきから同じところ見てません?」

「そう?」

「はい」

「気のせいじゃない?」

「そうですか?」

「うん」

 幸也は何でもない顔で資料へ視線を戻した。

 その直後。

 スマートフォンが震える。

 画面を見る。

『幸也さん』

 亜美。

 幸也の指がすぐに動く。

『今日、少し会えますか?』

 短い文章を見て。

 少しだけ口元が緩んだ。

『いいよ』