忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 数日後。

「幸也さん?」

「ん?」

「今日は弾かないんですか?」

「今日はいいかな」

「そうなんですか……」

「何その顔」

「楽しみにしてたので」

「また弾くよ」

「……はい」

 亜美は少し残念そうに笑った。

 幸也に呼ばれて。

 また部室へ来た。

 この前と同じ。

 二人きり。

 でも。

 幸也はキーボードの前にはいない。

 亜美の向かいに座っている。

「…………」

 何だろう。

「幸也さん?」

「ん?」

「何か話があるんですか?」

「ある」

「…………」

 短い返事。

 いつもの幸也と少し違う。

 亜美は膝の上で手を重ねた。

「この前の告白」

「…………」

 指先に力が入る。

「覚えてる?」

「……はい」

「まあ、そうだよね」

 忘れるわけがない。

 初めて幸也に好きだと伝えた日。

 そして。

 振られた日。

「無かったことにしたいって言ったじゃん」

「……はい」

「あれ」

 幸也が亜美を見る。

「なしにしていい?」

「……え?」

「無かったことにするの」

「…………」

 亜美は瞬きをした。

「どういう……」

「そのまま」

「でも……」

 言葉が続かない。

「幸也さん……?」

「ん?」

「どうして……」

「…………」

 少しだけ間が空いた。

「嫌になったから」

「……何がですか?」

「無かったことにすんの」

「…………」

 分からない。

 聞きたいのに。

 幸也はそれ以上説明しない。

 ただ。

 いつもより真っ直ぐに亜美を見ている。

 期待してしまいそうになる。

 でも。

 もし違ったら。

 もう一度傷つくのが怖くなって。

「……私、そろそろ」

 亜美は立ち上がろうとした。

 その瞬間。

 手首を掴まれた。