忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 研究室での作業がひと段落する。

 幸也は椅子の背にもたれた。

 机の上には途中までまとめた資料。

 少し離れたところでは、三年の直充が自分の作業を続けている。

「…………」

 幸也は資料へ視線を落とした。

 好きなのは分かった。

 問題は。

 その先だった。

 亜美と付き合う。

 考えた途端、簡単には進めなくなった。

 直充の妹。

 それだけじゃない。

 自分が今までどんな付き合い方をしてきたか。

 幸也自身が一番よく知っている。

 来るなら拒まない。

 離れるなら追わない。

 終わればそれまで。

 それで困ったことはなかった。

 でも。

 亜美に同じことができるのか。

「…………」

 できない。

 そう思った。

 離れていった亜美を。

 自分は追った。

 会いたいと思った。

 もう一度、そばに来てほしいと思った。

 今までと違う。

 だからこそ。

 付き合わない方がいいのかもしれない。

「幸也さん」

「ん?」

 直充の声に顔を上げる。

「これ、教授に出すの明日でしたよね」

「そう」

「分かりました」

 直充がまた自分の作業へ戻る。

 その横顔を見て。

 幸也は何も言わなかった。

 直充の妹。

 軽い気持ちで近づいていい相手じゃない。

 それは。

 今も変わらない。