忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「もう一回聴く?」

「え?」

「この曲」

 亜美の顔が明るくなる。

「いいんですか?」

「そんな嬉しい?」

「嬉しいです」

「分かりやすいね」

「……だって」

 恥ずかしくなって俯く。

 幸也はそんな亜美を見て、鍵盤へ向き直った。

「じゃあ弾くよ」

「はい」

 もう一度。

 最初の音が鳴る。

 亜美は静かに聴いた。

 初めて会った日に聴いた曲。

 あの日は。

 亜美が幸也を見つけた。

 遠くにいた人を好きになって。

 その音を追いかけて、同じ大学まで来た。

 そして今。

 幸也が。

 亜美に聴かせたいと思って、同じ曲を弾いている。

「…………」

 もう逃げなくていい。

 同じ曲が。

 あの日よりずっと近くに聞こえた。