忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「幸也先輩」

「ん?」

 翌日。

 後輩に呼ばれて顔を上げる。

「これ、直充先輩に渡してもらえます?」

「自分で渡せば?」

「今日いないんですよ」

「俺も会うか分かんないけど」

「会ったらでいいです」

「まあ、いいよ」

 紙を受け取る。

 直充。

「…………」

 亜美の兄。

 そこまで考えて。

 また。

 亜美が出てきた。

「…………」

「先輩?」

「何?」

「いや、何でもないです」

「そっか」

 幸也は紙を鞄に入れた。

 最近。

 何をしていても、どこかで亜美につながる。

 いや。

 今までもつながっていたのかもしれない。

 直充の妹。

 大学見学に来た高校生。

 自分の演奏を聴きに来る子。

 ずっと自分を好きだった子。

 そうやって。

 自分の中で亜美に名前をつけていた。

 だから。

 その先を考えなくて済んでいた。

「…………」

 でも。

 いなくなって。

 初めて気づいた。

 部室に亜美がいることも。

 自分の音を聴いていることも。

 話しかければ嬉しそうにすることも。

 いつの間にか。

 当たり前になっていた。