忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 部室へ行っても。

 亜美はいなかった。

「…………」

 椅子に座る。

 鍵盤に触れる。

 音を重ねていく。

 いつもなら。

 弾いているうちに余計なことなんて考えなくなる。

 なのに今日は。

 頭の片隅にずっと残っている。

 さっき見た亜美。

 友人と笑っていた顔。

「…………」

 幸也の指が止まった。

 何でこんなに気になるんだろ。

 文化祭の日。

 客席に亜美を探した。

 来ると言ったから。

 それだけだと思っていた。

 来なかったから気になった。

 約束していたからだと。

 でも。

 文化祭が終わっても。

 まだ探している。

 廊下を歩けば、黒い髪に目がいく。

 部室の扉が開けば、亜美かと思う。

 見つければ声をかけたくなる。

 避けられれば。

 理由が知りたくなる。

「…………」

 幸也は椅子の背にもたれた。

 天井を見る。

「何それ……」

 自分でも。

 少しおかしかった。