忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 研究室での作業がひと段落する。

 幸也は鞄を肩にかけた。

「幸也、今日どうする?」

「部室行く」

「また?」

「まあ」

「文化祭終わったのに真面目じゃん」

「暇だから」

「何それ」

 適当に返して別れる。

 廊下を歩き、階段を下りる。

 その途中で。

 黒い髪が見えた。

「…………」

 少し先。

 亜美だった。

 友人と話しながら歩いている。

 幸也の足が止まった。

 いた。

 それだけで、声をかけようとした。

「亜美ちゃ――」

 やめた。

「…………」

 また避けられるかもしれない。

 そう思ったら、呼べなかった。

 亜美はまだこちらに気づいていない。

 友人に何かを言われ、小さく笑った。

「…………」

 笑ってるじゃん。

 最近。

 自分の前では見ていない顔だった。

 元気ならいい。

 何かあったわけじゃないなら、それで。

 そう思ったはずなのに。

 何となく。

 面白くない。

「…………」

 亜美はそのまま角を曲がった。

 見えなくなる。

 幸也は少しの間、その場所を見ていた。