忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 亜美に避けられるようになってから。

 幸也は妙に落ち着かなかった。

「…………」

 軽音サークルの部室。

 キーボードの前に座り、適当に鍵盤を鳴らす。

 少し弾いて。

 止まる。

 もう一度。

 今度は少し長く弾いてみる。

 それでも途中で指が止まった。

「…………」

 何だろ。

 集中できない。

 文化祭も終わった。

 練習に追われることもない。

 弾きたいものを好きに弾けばいい。

 いつもなら、それで十分だった。

 幸也は鍵盤から手を離した。

 ふと、部室の扉を見る。

「…………」

 誰も来ない。

 当たり前なのに。

 しばらくして。

 また扉を見た。

「……何やってんだろ」

 小さく呟く。

 亜美がここへ来なくなってから。

 何度。

 あの扉を見ただろう。