忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 数日後。

「なあ、群司」

「ん?」

 休み時間。

 友人が廊下の方を見ながら言った。

「亜美さんって、綺麗だよな」

 群司は反射的にそちらを見る。

 亜美が歩いていた。

 長い黒髪。

 静かな表情。

 誰とも話さず、一人で歩いている。

「……まあ」

「何その反応」

「何が?」

「絶対思ってるだろ」

「何を」

「綺麗って」

「別に否定してないじゃん」

「だよな。目立つよな、あの子」

「……うん」

「でも、あんま喋ってるとこ見ないよな」

 群司は少しだけ黙った。

「そうだな」

「群司でも話したことない?」

「ないよ」

「珍し」

「俺を何だと思ってんだよ」

「全校生徒の友達」

「んなわけあるか」

 周りから笑い声が上がる。

 群司も笑った。

 いつものように。

 けれど。

 もう一度、廊下を見る。

 亜美はもういなかった。

 ――いつも一人だな。

 また。

 同じことを考えていた。