忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 鍵盤から指を離した。

 一拍遅れて、大きな拍手が響く。

「ありがとうございました!」

 ボーカルの声に歓声が重なった。

 幸也は立ち上がり、メンバーと一緒に頭を下げる。

 顔を上げて客席を見た。

「…………」

 たくさんの人がいる。

 手を振る人や笑っている人。スマートフォンを向けている人。

 その中を見渡す。

「…………」

 いない。

 最後まで、亜美は来なかった。