忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 走って。

 走って。

 ようやく丈の姿が見えた。

「先生……!」

 丈が顔を上げる。

「亜美」

「…………」

 その声を聞いた瞬間。

 張りつめていたものが、少しだけ緩んだ。

 丈のところまで行き、足を止める。

「どうした?」

「…………」

「亜美?」

「群司が……」

「うん」

「昨日の……見てて……」

「…………」

「先生といたところ」

「そっか」

「話も……聞いてて……」

「うん」

「それで……今日……」

 言葉が続かない。

 走ってきたせいだけじゃない。

 息がうまく整わなかった。

「キス……されて……」

 丈の表情が変わる。

「群司に?」

「……うん」

「…………」

「私……分かんなくて……」

 何から話せばいいのか。

 自分が何を伝えたいのか。

 それすら分からない。

「急に……」

「亜美」

「…………」

「とりあえず座ろうか」

「……うん」

 丈の声はいつもと変わらなかった。