忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「群司」

「うん」

「私……」

 亜美は言葉を探した。

 群司が自分を好きだった。

 知らなかった。

 聞きたいことはいくつも浮かぶ。

 でも、その前に伝えなければならない。

 昨日、自分も好きな人へ気持ちを伝えたから。

 言うことがどれだけ怖いのか。

 返事を待つ時間がどれだけ長いのか。

 今は分かる。

 だから曖昧にはしたくなかった。

「ごめん」

 群司の表情が止まる。

「私、好きな人がいるの」

「…………」

 知っていた。

 亜美に好きな人がいることは。

 だから。

 こうなるって、分かっていた。

 それでも実際に亜美の口から聞くと、胸の奥が痛んだ。

「……そっか」

「ごめん」

「謝らなくていいよ」

「でも」

「亜美が悪いわけじゃないだろ」

 群司は少し視線を逸らした。

 振られた。

 思っていたより苦しい。

「…………」

 好きな人。

 その言葉が胸の中に残った。

 誰なのか。

 亜美は言わない。

 群司も聞かなかった。

 でも、頭に浮かんだ男がいた。

 丈。

 昨日、泣いていた亜美が自分から求めた男。

『先生』

『……して』

『いつもの』

『今は、先生がいい』

「…………」

 もしかして、あいつなのか。

 亜美が好きなのは丈なのか。

 そう思った瞬間、昨日の光景が戻ってくる。

 丈の服を掴んでいた亜美。

 泣いて余裕をなくし、自分から求めていた。

「……っ」

 群司は拳を強く握った。

「群司?」

 亜美の声に顔を上げる。

「大丈夫?」

「……大丈夫」

 短く答えた。