忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 文化祭の賑やかな声が、少しずつ遠くなっていく。

 亜美は群司の隣を歩いていた。

 さっきまで大きく聞こえていた音楽も笑い声も、今は遠い。

「…………」

 群司は何も言わない。

 亜美も何となく話しかけられなかった。

 光成先輩と鉄先輩も、何か知っているようだった。

「群司」

「ん?」

「まだ?」

「……もうちょい」

「うん」

 また静かになる。

 少し歩いて群司が足を止めた。

「ここでいい」

 亜美も止まる。

 人通りは少ない。

 遠くから聞こえる文化祭の音だけが、二人の間に入り込んでいた。

「話って?」

「…………」

 群司は亜美を見る。

 言う。

 そう決めていた。

 ステージが終わったら、ずっと言えなかったことをちゃんと伝える。

 それなのに、いざ亜美を前にすると喉が詰まった。

「群司?」

「……待って」

「え?」

「今、言うから」

 亜美が黙る。

 群司は一度、息を吐いた。

 昨日のことは今はいい。

 丈のことも、あの光景も。

 全部あとでいい。

 まずは自分の気持ちを伝えたかった。

「亜美」

「うん」

「俺さ」

 群司の手がぎゅっと握られる。

「ずっと、亜美が好きだった」

「…………」

 亜美の目が大きくなる。

「……え」

「高校の頃から」

「…………」

「ずっと好きだった」

 今度は、はっきりと言った。

 亜美は驚いたまま群司を見ている。

「……群司が?」

「うん」

「私を?」

「そう」

 群司が少し笑う。

「そんな驚く?」

「だって……」

「気づいてなかった?」

 亜美は小さく頷いた。

「全然……」

「そっか」

 群司は息を吐く。

「まあ、そうだよな」

 言っていない。

 今まで一度も好きだと。

 高校生の頃からずっとそばにいた。

 屋上で一緒に昼を食べて、大学も同じでサークルにも誘った。

 近くにいられることが嬉しかった。

 でも、それだけでいいわけじゃなかった。

 いつか言いたかった。

 ずっと言えなかっただけで。

「…………」

 やっと言えた。

 あとは亜美の答えを聞くだけだった。