忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「そろそろ行くぞ」

 穂高の声が響く。

 空気が一気に引き締まった。

「光成、鉄。準備できてるか?」

「できてる!」

「うん」

「群司」

「はい」

「大丈夫か?」

「大丈夫です」

 穂高が群司を見る。

「ならいい」

 それから全員を見た。

「行くぞ」

「はい!」

 声が重なる。

 光成が笑う。

「絶対成功させようぜ!」

「光成」

「何?」

「声でかい」

「いいじゃん、気合い入るだろ?」

「うるさい」

「鉄まで?」

 緊張していた空気が少しだけ緩んだ。

 亜美も笑う。

 そのとき、

 群司と目が合った。

「…………」

 亜美はいつものように笑った。

「頑張って」

「…………」

 群司はその顔を見つめる。

 亜美は知らない。

 昨日、

 自分が見ていたことも。

 聞いていたことも。

「群司?」

「……おう」

「頑張ってね」

「うん」

 亜美は寧々のところへ戻ろうとする。

 長い黒髪が揺れた。

 その瞬間、

 群司の目が止まった。

「…………!」

 首筋。

 髪の隙間から、

 赤い跡が見えた。

 ほんの一瞬。

 すぐに黒髪に隠れる。

「…………」

 胸の奥を、

 強く掴まれたような気がした。

 昨日聞いた言葉が、

 嫌でも現実になる。

 丈と、

 亜美。

 群司は奥歯を噛んだ。

「群司」

 穂高の声。

「出るぞ」

「……はい」

 群司は前を向いた。