忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

『続いては――』

 ステージから聞こえた声に、

 亜美が顔を上げた。

「…………」

 聞き覚えのある声。

『ダンスサークルによるステージです』

 ステージ中央に、

 マイクを持った直充が立っていた。

「お兄ちゃん……」

 昨日。

 先生に司会を頼まれたらしい。

『何で俺が……』

 珍しくぼやいていた。

 それでも結局引き受けるところが、

 直充らしい。

『それでは、どうぞ』

 直充が紹介を終える。

 拍手が響いた。

 舞台袖へ戻ってきた直充と、

 亜美の目が合う。

「お兄ちゃん、お疲れさま」

「まだ終わってないけどな」

「司会、大変?」

「まあ」

 そう答えながら、

 直充は会場の奥へ目を向けた。

「…………」

「お兄ちゃん?」

「ん?」

「どうしたの?」

「何でもない」

 直充は眼鏡を押し上げる。

「亜美も仕事戻れよ」

「分かってる」

「ちゃんと飯食った?」

「まだ」

「食えよ」

「時間あったら、お兄ちゃんもでしょ」

「俺はいい」

「よくない」

「はいはい」

 直充は少しだけ笑った。

「亜美ちゃん!」

「あ、はい!」

 先輩マネージャーに呼ばれ、

 亜美はそちらへ向かった。