忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 ステージが近づくにつれて、

 舞台袖の空気が変わっていった。

 聞こえてくる歓声。

 マイクの音。

 出演者が行き交う足音。

「次、うちだよな?」

 光成が舞台の方を覗く。

「そう」

 鉄が答える。

「人多くない?」

「多いね」

「え、めっちゃいるじゃん。最高」

「楽しそう」

「楽しいだろ。鉄、緊張してる?」

「してない」

「俺もしてない」

「聞いてない」

「ひどくない?」

「光成」

 穂高の声。

「はいはい、分かってる!」

「返事は一回」

「はい!」

「…………」

「何、その顔」

「もういい。並べ」

「はーい」

 光成が笑いながら位置につく。

 鉄もその隣へ。

 群司も続いた。

 マネージャーたちも最後の確認に入っていた。

「寧々ちゃん、そっちお願い!」

「はい」

「亜美ちゃんはここ! 何かあったらすぐ呼ぶから」

「分かりました」

 先輩マネージャーに言われ、

 亜美は舞台袖に残る。

「…………」

 自分が踊るわけじゃないのに、

 緊張する。

 ずっと練習を見てきた。

 何度も同じところを繰り返して。

 上手くいかなくても、

 また最初から踊って。

 今日まで練習してきた姿を知っている。

 だから、

 成功してほしかった。

 亜美は胸の前で、そっと手を握った。