忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 少し離れたところで、

 群司が亜美を見ていた。

 笑っている。

 光成先輩と鉄先輩に何か言われて。

 先輩マネージャーたちに呼ばれて。

 忙しそうに走り回っている。

 いつもの亜美に見える。

「…………」

 昨日。

 泣いていたのに。

『もう、やだ』

『何も考えたくない』

『忘れたい』

 耳に残っている。

 それだけじゃない。

『……して』

『いつもの』

『先生が、いつもしてくれること』

 群司は視線を逸らした。

 亜美が丈の服を掴んでいた。

 あの声で、

 丈を求めていた。

『今は、先生がいい』

「…………」

 丈。

 あいつは、

 亜美にとって何なんだ。

 考えても、

 答えは出ない。

「群司」

「…………」

「群司」

「……はい」

 顔を上げる。

 穂高が目の前に立っていた。

「聞いてたか?」

「すみません」

「もうすぐ出番だ」

「はい」

「集中しろ」

「…………」

「何があったか知らねえけど」

 穂高が群司を見る。

「ステージ上がったら関係ないからな」

「……はい」

「終わってから考えろ」

「はい」

 穂高はそれ以上聞かなかった。

「光成と鉄にも伝えろ」

「分かりました」

 群司は息を吐く。

 今は、

 踊る。

 終わったら、

 亜美と話す。