忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「先生」

「ん?」

「ありがとう」

「何が?」

「……何も聞かないでいてくれたから」

「…………」

「ちゃんと話せるまで、待っててくれた」

「話したくなったら話すと思ったから」

「……うん」

 亜美の口元が少しだけ緩んだ。

 丈の手が、

 また髪を撫でる。

 明日は文化祭。

 亜美は幸也のステージを見に行く。

 ダンスサークルにも行く。

 そこには、

 群司もいる。

 丈の指が、

 亜美の長い黒髪を耳へかけた。

 白い首筋が見える。

 丈は顔を寄せた。

 そこへ、

 唇を触れさせる。

「……先生」

「何?」

「くすぐったい」

「我慢して」

「何で?」

「亜美、かわいいから」

「……何それ」

「そのまま」

「…………」

 亜美は少しだけ頬を赤くして、

 目を閉じた。

 だから、

 気づかなかった。

 丈が、

 同じ場所に。

 いつもより長く触れていたことに。

 やがて、

 丈が顔を離した。

 首筋には、

 小さな跡が残っていた。

 丈はそれを見る。

 そして、

 亜美の黒髪を元に戻した。

 隠れた。

 今は。