忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「亜美ちゃん」

 休み時間。

 イヤホンを外したところで声をかけられた。

 顔を上げる。

 同じクラスの女子が二人、机の前に立っていた。

「これ、次の授業で使うから書いてくれる?」

「うん」

 渡されたプリントを受け取る。

「ありがとう」

 二人はそれだけ言って戻っていった。

 亜美は名前を書く。

 必要な欄を埋めていく。

 少し離れたところから、声が聞こえた。

「普通だったね」

「ね」

 手が止まった。

 ――普通って、何。

 顔を上げようとして。

 やめた。

 聞こえなかったことにする。

 最近、そういうことが増えた。

 何かを言われても。

 気づかないふりをする。

 笑われても。

 聞こえないふりをする。

 理由を聞いたら、もっと傷つくような気がした。

 だから。

 知らない方がいい。

 亜美はそう思うようになっていた。