忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 扉が閉まった。

「…………」

 廊下へ出た瞬間、亜美は立ち止まった。

 大丈夫。

 そう思った。

 ちゃんと話せた。

 ちゃんと笑えた。

 明日も会える。

 あの音だって、また聴ける。

 何も失っていない。

「…………」

 そう思ったのに。

 足が動かなかった。

 視界が少しだけ滲んだ。

「……っ」

 亜美は慌てて目元を押さえた。

 泣かない。

 ここでは。

 まだ幸也が、すぐ向こうにいる。

「…………」

 唇を強く結ぶ。

 好きだった。

 違う。

 好き。

 今も何も変わっていない。

『無かったことにしたいです』

 自分でそう言った。

 でも。

 無かったことになんて、できなかった。

「…………」

 涙が一つだけ、頬を伝った。

 亜美はすぐに拭った。

 そして歩き出した。

 明日は文化祭。

 幸也のステージを、絶対に見に行く。

 楽しみにしていた。

 ずっと、楽しみにしていた。

 だから明日は、ちゃんと笑って幸也の前に行こう。

 今まで通りの。

 亜美として。