忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 亜美は、最初から一人だったわけではない。

 高校へ入学したばかりの頃は、友達ができたらいいと思っていた。

 中学まで一緒だった友人たちとは高校が離れた。

 知らない人ばかりの教室は緊張したけれど。

 それでも最初は、自分から話しかけようとした。

「どこから来たの?」

「その筆箱、可愛いね」

「次、移動教室だよね?」

 亜美なりに頑張った。

 最初のうちは、周りも普通に話してくれた。

『亜美ちゃんって大人っぽいよね』

「そうかな」

『髪、すごい綺麗』

「ありがとう」

『高校生に見えないよね』

 褒められているのだと思った。

 どう返せばいいのか分からなくて、少し笑った。

 その頃は。

 ただ、それだけだった。

 いつから変わったのだろう。

 亜美自身にも、よく分からない。

『また男子に話しかけられてたよね』

『あの子、亜美ちゃんのこと好きなんじゃない?』

『いいよね。何もしなくてもモテる人って』

「そんなことないよ」

 最初は、笑って答えた。

 本当に、そんなことないと思っていた。

 プリントを渡された。

 授業のことを聞かれた。

 廊下ですれ違ったときに話しかけられた。

 それだけ。

 なのに。

 男子と少し話すだけで、誰かの視線を感じるようになった。

 目が合う。

 逸らされる。

 そのあと、小さな笑い声が聞こえる。

 教室へ入った瞬間、それまで続いていた会話が不自然に止まることもあった。

 自分が何かをしたのかもしれない。

 最初は、そう考えた。

 話し方が悪かった?

 笑い方?

 男子と話しすぎた?

 何か気に障ることを言った?

 考えても、分からない。

 だから亜美は。

 少しずつ、話さなくなった。

 話さなければいい。

 目立たなければいい。

 そうすれば何も起こらない。

 そう思った。

 けれど。

 黙っていても。

 一人でいても。

 亜美の華のある容姿は、人の目を引いた。

 それだけは。

 亜美自身にも、どうすることもできなかった。