忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「…………」

 幸也はそれ以上、説明しなかった。

 亜美を適当に扱いたくない。

 今までの女と同じところに置きたくない。

 直充の妹だから。

 それも確かにある。

 でも、もしそうじゃなかったとしても同じだった。

 亜美はもう、蔑ろにしていい女の子ではなかった。

 大切にしないといけない人の中に、いつの間にか入っていた。

 だから。

 自分で汚してはいけない。

「…………」

 でも、そんなことを幸也は亜美には言わなかった。

 大切だから、なんて。

 今、言うべきじゃない。

 そんな言葉を渡せば、亜美はきっと期待してしまう。

「…………」

 亜美は俯いた。

 何が駄目なのか、結局分からなかった。

 ただ一つだけ分かった。

 お兄ちゃんの妹じゃなくても駄目だった。

 私だから。

 断られた。

「…………」

 目の奥が熱くなった。

 泣きたくない。

 幸也の前で、泣きたくなかった。

 泣いたら困らせる。

 好きだと言って、断られて。

 そのうえ困らせるなんて、したくなかった。

「……分かりました」

 亜美は顔を上げた。

「そっか」

 幸也は、それだけ言った。

「…………」

「…………」

 沈黙。

 今までなら、こんな沈黙は怖くなかった。

 幸也がキーボードを弾いて。

 亜美が聴いて。

 何も話さない時間だって、好きだった。

 でも今は、同じ静けさなのに苦しかった。

 告白した。

 断られた。

 たったそれだけで、今まであったものまで全部変わってしまったような気がした。