忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 夕方。

 ダンスサークルの準備が終わった。

「お疲れさまでした」

 声が重なる。

 明日の集合時間。

 持ち物。

 最後の確認。

 そして。

 解散。

「…………」

 亜美は。

 すぐにスマートフォンを見た。

 幸也から。

 メッセージが届いている。

『もう少しで終わる』

「…………」

 胸が。

 跳ねた。

 ついに。

 来た。

「亜美」

「え?」

 顔を上げる。

 群司がいた。

「帰る?」

「……うん」

「じゃあ駅まで――」

「あ、ごめん」

「…………」

「ちょっと用事あるの」

「そっか」

「うん」

「…………」

 群司は。

 一瞬だけ。

 昼間知った名前を思い出した。

 丈。

 ――もしかして。

 聞きそうになって。

 やめた。

「じゃあ、また明日」

「うん」

「遅刻すんなよ」

「しないよ」

「ほんと?」

「群司こそ」

「俺はしない」

「怪しい」

「何でだよ」

 亜美が笑う。

 群司も笑った。

「頑張ろうな」

「うん」

「明日」

「頑張ろう」

「じゃあな」

「じゃあね」

 亜美が。

 離れていく。

「…………」

 群司は。

 その背中を見送った。

 どこへ行くんだろう。

 誰に会うんだろう。

 聞けばよかった。

 そう思う。

 でも。

 聞けなかった。

 もし。

 答えが。

 聞きたくないものだったら。

 そう思ったら。

 怖かった。

「…………」

 亜美の姿が。

 見えなくなる。

 群司は。

 ゆっくり前を向いた。