忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

「何で告白しようと思ったの?」

 丈が聞く。

「……最近、思うの」

「何を?」

「このままでいいのかなって」

「…………」

「大学に入って」

 ゆっくり。

 亜美は言葉を探す。

「前より会えるようになって」

「うん」

「話せるようにもなって」

「うん」

「あの音も、また聴けるようになって」

「…………」

「それだけで嬉しかった」

 亜美の声が。

 少しだけ柔らかくなる。

「高校生のときは、もう一度会えたらいいなって思ってたから」

「うん」

「だから最初は、それだけでよかったの」

 会えた。

 名前を呼んでもらえた。

 話せた。

 あの音を聴けた。

 それだけで。

 全部。

 嬉しかった。

「でも」

 亜美は自分の指先を見る。

「最近……欲張りになったのかも」

「欲張り?」

「うん」

「どういう?」

「もっと会いたいとか」

 ひとつ。

「もっと話したいとか」

 もうひとつ。

「私のこと、もっと見てほしいとか」

「…………」

「そういうこと思うようになった」

 言葉にすると。

 自分でも。

 こんなことを考えていたのだと。

 改めて気づかされる。

「この前も」

「うん」

「文化祭のステージに出るって聞いて」

 思い出す。

 幸也の笑顔。

『待ってる』

「すごく嬉しくて」

「…………」

「絶対見に行くって言った」

「そう」

「そしたら」

 亜美の口元が。

 無意識に緩む。

「待ってるって」

「…………」

「言ってくれた」

 丈は。

 亜美を見ていた。

 その顔。

 何度も見てきた。

 幸也の話をするとき。

 亜美は。

 こういう顔をする。

 嬉しそうに。

 大事なものを思い出すように。

 笑う。

「……よかったじゃん」

「うん」

 亜美は素直に頷いた。

「嬉しかった」

「…………」

「それで」

 少し黙る。

「思ったの」

「何を?」

「ちゃんと好きって言いたいなって」

 丈の胸の奥に。

 鈍いものが落ちた。

「…………」