忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 文化祭なのだから。

 当然、軽音サークルだって出演する。

 そんなこと。

 少し考えれば分かることなのに。

 自分たちの準備に追われていて。

 今まで考えていなかった。

 幸也先輩。

 出るのかな。

 亜美はもう一度スケジュールを見る。

 出演者の名前までは書かれていない。

 ただ。

 軽音サークル。

 それだけ。

 なのに。

 さっきまで仕事のために見ていた紙が。

 急に違うものに見えた。

 もし。

 幸也が出るなら。

 見たい。

 ステージの上で弾くところを。

 いつもの部室ではなく。

 たくさんの人の前で。

 幸也が弾くところを。

 見たい。

「亜美ちゃん?」

「え?」

「どうしたの?」

「あ……」

 顔を上げる。

「軽音って、誰が出るか分かりますか?」

「軽音?」

「はい」

「何組か出ると思うけど。誰が出るかまでは分かんないな」

「そうなんですね」

「直充さん?」

「え?」

「お兄さん、軽音なんでしょ? 出るのかなって」

「ああ……」

 言われて初めて。

 兄も軽音だったことを思い出した。

「お兄ちゃんも出るのかな」

「知らないの?」

「聞いてないです」

「兄妹ってそんな感じ?」

「たぶん」

 先輩が笑う。

 亜美も少し笑った。

 でも。

 視線は。

 また紙へ戻った。

 軽音サークル。

「…………」

 幸也先輩。

 出るのかな。

 知りたい。

 そう思った。

 聞きたい。

 会って。

 直接。