忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 二人きりになる。

 丈が近づく。

 亜美は逃げない。

 触れられる。

 髪。

 頬。

 唇。

 久しぶりだった。

「…………」

 離れたあと、亜美は丈を見る。

「何?」

「……何でもない」

「そっか」

 また。

 触れられる。

 身体は、ちゃんと覚えていた。

 忙しくて。

 しばらくこうしていなかったのに。

 戸惑わない。

 丈の手も。

 距離も。

 声も。

 全部。

 知っている。

「亜美」

「ん……」

「久しぶりだね」

「うん」

「忘れた?」

「何を?」

「僕のこと」

「忘れるわけないでしょ」

「そっか」

「先生は」

「何?」

「私のこと忘れないでしょ」

「…………」

 丈が亜美を見る。

「忘れないよ」

「うん」

 亜美は笑った。

 知っていた。

 先生なら。

 そう言うと思っていた。

 丈は今日。

 亜美に会いに来た。

 最近、ゆっくり話せていなかったから。

 それだけで。

 十分だった。