忘れられないよ君は―初恋だけでは終われない―

 ある日。

 練習を終えて、亜美は一人で駅へ向かっていた。

「…………」

 疲れた。

 足が重い。

 鞄も重い。

 でも。

 今日もちゃんと終わった。

 明日は、講義のあと塾。

「…………」

 そこで。

 ふと思った。

 先生。

「……あ」

 最後にゆっくり話したのは、いつだっただろう。

 塾では顔を合わせる。

 挨拶もする。

 少し話すこともある。

 でも。

 前みたいに一緒に帰って。

 大学であったことを全部話して。

 そのまま丈についていく。

 そんな時間が、最近はなかった。

「…………」

 サークルがあるから、塾の時間も前より限られている。

 塾が終われば、次の日のことを考えてすぐに帰る。

 忙しかったから。

 気づかなかった。

 亜美はスマートフォンを取り出す。

 丈とのやり取りを開いた。

「…………」

 何か送ろうかと思って。

 指が止まる。

 何を送るんだろう。

 先生、元気?

 違う。

 会いたい?

「…………」

 そこまで考えて、亜美は少しだけ恥ずかしくなった。

 スマートフォンを閉じる。

 別に、会えなくなったわけじゃない。

 また塾で会える。

 そう思って、鞄にしまった。

 それなのに。

 駅までの道を歩きながら。

 亜美はもう一度、丈のことを思い出していた。